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携帯のファミリーパックで、大好きな母親の淳子へ、息子の志郎は四六時中電話をかけまくっている。そばに居る友達が呆れた顔をしてるが本人はぜんぜん気にしない。 志郎が大学に入り、家を出てからはますます頻繁になった。メールもシ合っているから話すことなどないだろうと思うが、そのうちに、冗談交じりに好きだ、愛してると、実母に向かって実の息子が口にするようになり、淳子も志郎の冗談を受け流すようになっていた…
(逢いたくて死にそうだよ、お母さん…)と、志郎が言うと(私だって逢いたいわ…)と、淳子が答える。(お母さん、こっちへ来てよ…)と言うと、(あなたが帰って来てよ…)と母が相槌をうつ。そしてすぐに話題が変り、親子の長電話が延々とつづく… 淳子の夫に転勤命令が出た。行き先は上海で期間は二年だが、延長の可能性もあるという。三十代で海外勤務というのは、その後の昇進に大きく関わってくるのだと夫に言われ、淳子も当然ついてくるという気でいた夫に、淳子は強く拒んだ… 淳子自身としては、夫について行くのを拒む理由が欲しくなった。これと言ってなにもない。なにもないのに拒んだ。それがどうもよくわからない。さめた夫婦関係ということは理由にならない。ふと淳子は息子の志郎のせいだろうかと考えた。しかし、すぐにまさかと思った… いつもの母との長電話の途中で、父親の海外勤務の話しを聞かされた志郎は、すぐに電話を切ると、実家に飛んで帰った。志郎にはこんなことははじめての経験で、電話で話す内容ではないように思った。母が父に付いて行きたくないほんとの理由を知りたくてしょうがない… 親子が久しぶりに面と向かっても、これと言って話すことはなかった。それほど、四六時中この親子は、夜も昼もなく通話しまくってるから、「あら?どうしたの?なにかあったの?」と、淳子は息子の顔を見て怪訝な表情を浮かべただけだ。 母の胸のうちを聞き出そうとした志郎だったが、うやむやのまま実家からもどってきた… 実家から戻った深夜、志郎が淳子ととりとめのない長電話をして、「…もう遅いから寝なさい…」と、母が電話を切ろうとするので、「さっき逢ったばかりなのに又逢いたい気分だよ、お母さん…」と息子が母親に甘える。「じゃ、夢で逢いましょう…」 … その淳子の一言で、志郎は部屋から飛び出し一目散で実家へ向かった。電車を乗り継ぎタクシーを使って家に辿り着いたのは午前二時近かった。連絡を受けていた淳子は、息子の帰りを寝ずに待っていた。そして、息子の部屋のベッドで、初めて親子は抱き合って寝た… |
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